新幹線の窓の外を、冬の景色が高速で後方へ飛び去っていく。富士山が見えるはずの窓側に座っていたが、視界に映るそれはレゴブロックみたいな景色だ。イヤホンから流れる《猫 シ Corp.》の「Lofi」の音が、現実の走行音と混ざり合って溶け合い揺れ続けている。
チリバーブがかかった、かつての消費社会の残骸のようなメロディ。社会学者はよく「消費社会の風刺」だと称するけど、それが的を射ているのかどうかはよくわからない。先輩はよく、この手の音楽を「幽霊ミュージック」と呼んでいた。幽霊みたいな存在の音楽。もしくは幽霊が聞いているであろう音楽。どちらでもいい。
「大森、この音さ、誰の記憶にもない場所のBGMなんだよ」
埃っぽいカビの匂いと、松脂の甘ったるい匂いが混ざったあの空間で、先輩はそう言った...